多摩川中流域

2.不思議な光景




発端


 梅雨が明け、暑い日が数字続いたある日、調布の某所でおそい昼食を取りコーヒーを飲みながら仕事の準備をした。気持ちのよい適度のそよ風空調と音楽。没頭した後の疲れた体をほぐすため、矢野口までゆるゆると歩いて帰ることにした。

 京王多摩川付近では花火大会の準備で、土手の道路から河川敷に降りる仮設の板敷き通路が所々作られていた。自分が小学生ぐらいだった頃、家族で多摩川の花火を見に来、あまりの混雑で、父(だったと思う)が土手に上がるとき靴を片方無くしたのを思い出した。

 ところで、多摩川の橋(多摩川原橋)を渡りながら何気なく(というより、何か魚とか見えないかと)川の流れを見ていたら、何となく変な光景を見つけた。

 川の流れが、本流から支流(?)を逆流している。

 実は支流ではなく、その上流側の流れがふさがった袋小路のものだ。
 しかし、逆流しているのだから、その流れの出口がどこかにあるはずだ。・・・と思って少し上流側を目でたどってみていたら、なんと上流側では下流に向かって流れているようだ。

袋小路の支流

 細長い袋小路の川を、本流に近いところでは上流に向かって流れ、本流からやや離れたところでは下流に向かって流れている。

 本当に? だとしたら、上からの流れは伏流水が出たもの? 流れのぶつかるところはどうなっているのだろう? 渦のように? 一方が他方の下をもぐる? (そんなことはありえない・・・)。それとも別の出口が脇にある?

 ちょっと確かめたくなって、橋を渡ってから川岸に降りた。



不思議な光景


 手前は下流側。上流側に向かって波ができている。奥の方ではさざ波が下流側に向かっている。橋の上から見たとおりだ。波の向かっている方向をいろいろ確認し直したが、間違いはない。

逆流1  逆流2

 草の葉をちぎって浮かべてみた。波に乗って上流側に流れていくと思った。しかし、波とは逆にゆっくり下流側に漂っていった。よくよく見ると水面のあぶくも下流に向かって動いていた。この袋小路の出口では、本流の勢いが影響して波は上流に向かっているのだが、水の流れは下流に向かっているのだ。

 ・・・何となく分かったような分からないような・・・だけどこれが当面の結論。波の方向と水の流れの方向は逆の場合がある。

 両者のぶつかる辺りを中心に水の出口になる流路がないか探してみた。あったのはこちらより段差の高い流れ込む流路だけだった。まあ、つじつまがあうか。


 上流側の波を調べてみた。上流に見えた波は、確かに下流側に向かっているが、さざ波程度。いい写真が撮れない。もっとはっきりしたところがないか見ていくと、チョロチョロと水の流れる音が聞き取れた。下流に向かって流れているのが明白だ。

逆流3

 これでいいか。それにしても、上流は本流とはつながっていないのにこんなに水が豊富に流れている。・・・伏流か湧き水がある? それもかなりな? ・・・見てみたい。
(続く)

 (追記:上流側に波が向かうのは風が川上に向かって吹いていたためかもしれない。しかし、横に吹いているときも、微風の時も波は上流に向かっていた。ただ、微風の時はさざ波程度。・・・もしかして、風のせいで波ができていたのかもしれない。橋を渡る度に、気になってみている。)




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