多摩川中流域

10.小さな探検の続き



府中多摩川かぜの道、ギシギシに誘われて

冬枯れの多摩川の土手では、護岸のコンクリ斜面の隙間や枯れ草の間に、太陽の光を受けるように葉を広げている小さな草が見られる。
そんな中でやや大きめで赤味がさし、萌え出るような姿をしているのがギシギシだ。
その様な早春の草の姿を撮っておこうと思って土手を降りた。

ギシギシ

赤味がさしてきれいなのを撮っていると、別の姿も目に付いてきた。生えている場所のちょっとした環境によって青々としているのもある。

ぎしぎし


ギシギシのいろいろな姿を追っているうちに河原に出た。

この河原は、以前、ここの流れの源流がどうなっているのか疑問に思い調べた場所だ。
ここの流れの上流は川岸の崖に沿ってジグザグと良い景色になっている。
そのジグザグがどうも先細りで、多摩川の本流につながっているのかどうか疑問を感じたのだ。
以前はこの流れの脇の河原をさかのぼり、最後は横の崖を登って少しでも源流に近づこうとしたが、結局果たせなかった。
その時の様子は、このシリーズの5.(小さな探検−1)と6.(小さな探検−2)に書いた。
いつか上流を見てみようと楽しみに残していた場所だ。


源流

多摩川は雨があまりなかったためか、ここしばらく水位が下がっている。
これだけ水位が下がっていれば、中州にわたって、中州側からさかのぼって、源流がどうなっているか突き止めることができる・・・
そういう気持ちが働いてきた。



源流を望む



流れを飛び越えて石伝いに中州にわたることができた。
中州からここの流れの源流のあたりを見た。

源流

源流側の風景はあいかわらず同じで、川岸の崖に沿ってジグザグした流れになっている。
そのジグザグの流れの先端が、その先で本流とつながっているのかいないのか・・・
よくよく見ても、はっきりしない。・・・これも以前と同じだ。


二股

中州を少しさかのぼると本流から流れ込んでくる水路が合流するところがある。
以前来たときは水が流れていたが、今は水位が下がっているためか、水はまったく流れていない。

二股

写真右手は源流の方、左手は本流からの水路の跡。小さな水たまりが途中に残っていた。



源流の頭

ついに流れの先端に至った。そこは小さな池のようになっていて、流れはほとんど無く、水草などが生えていた。

最奥

源流の水草


少し下るとずいぶん豊かな流れなのに、この源流は多摩川の本流とはつながっていなかった。
結局ここの流れの水は、水位の低い今の時期はすべて周りの河川敷にしみこんだものや河原の砂利の間を通ったものがしみ出したり湧き出したりしたものだ。



川岸の崖を登る


源流

いま来た中州を帰りながら源流を振り返ってみた。
源流の頭。そこが最奥だと分かった今でも、こうやって眺めてみると、まだその先に続きがあるように見えてくる。

帰る途中で川岸の崖を写真に撮った。
川岸の崖、土砂が積もり、その上はススキなどの草原になっている。
崖の高さは大人の背丈ぐらい。

がけ


以前崖の上の草原で見たガガイモがどうなっているかちょっとみたい気がおきた。
枯れ草だらけで、もう何も残っていないだろうとは思ったが、
足場を選び、枯れ草の根元をつかんで川岸の崖を登った。



枯れ草の上のガガイモ

一面が枯れ草で覆われた河原に出た。
ガガイモの実は残骸のような感じで点々と残っていた。

ガガイモの実は割れていて、白く長い綿毛のかたまりが微風に揺れている。
綿毛の根元には種がついており、絡まった綿毛が風でゆっくりとほぐれ、種子がとんでいく。



ががいも  ががいも


ほとんど何の音も聞こえない世界。風と枯れ草が作り出す音だけが聞こえてくる。
すっかり没頭してガガイモの綿毛と種子の写真を撮った。

気がつけば、あっちでもこっちでも割れた実からむき出しになっている白い綿毛のかたまりが
風に揺られていた。



小さな不安

枯れ草の上を歩いて帰途についた。
途中でまだ新しい切り株に出会った。

きりかぶ


不安がよぎった。
最近多摩川のあちこちで工事が見られる。この草原の河原も開発されてしまうのだろうか?
向こうの方にはクレーンが見える。あそこはこの河原のすぐ続きの場所だ。

もう河原の湧き水調査や源流探検、思いもかけないガガイモとの出会いのようなことはできなくなるのだろうか?


(2006年1月下旬撮影)









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