多摩川中流域
大丸堰奥の秘境
(1)二種類の崖
多摩川の岸に沿った丘陵の崖
大丸堰辺りから上流は大栗川(乞田川)の合流部まで多摩丘陵が多摩川にせまっており、サイクリングロードはない。
対岸の府中多摩川かぜの道からそちらの方を見ていると、多摩川の岸に沿って小さな崖が木々の間から断続的に露出していることに気がつく。
それらの崖は交通公園の裏の崖とほぼ同じ高さでつながっていそうなものもあれば、それより一段低い位置にあるものもある。
近くに行ってよく見てみたいのだが、そこには道がない。渇水期の冬にでも、中州にわたり、そこから近づいてみようと思っていた。
ところが、思いがけないルートからそれらの崖に近づくことが出来た。
大丸堰の奥へ
稲城側から見た大丸堰。この堰の下流側には砂岩の層がある。この写真の中央はその砂岩層が多摩川の流れに洗われながら露出しているところ。
堰の上流では砂岩の層があるのかないのか、どうなっているのか、見たい気持ちに押され、ある日、ブラブラと上流側に入った。行けるところまでいってみたところ、交通公園裏の崖に近づけることがわかった。後日あらためてそのルートをたどった。
堰の奥に通じる道。大丸堰の左横は一段と高くなっている。奥に見えるのは南多摩水再生センターの施設。
大丸堰の上流部への入り口。モトクロス禁止の看板がある。ガードの奥は自然が保護されている区域。
ガードをまたいで入る。自転車は入れない。
秘境への道。左上にあるのは南多摩水再生センター。再生センターは一段高い段丘の上にある。
振り返ってみた大丸堰。
草原の中の小さな道。多摩川はすぐ丘陵にせまっていると思っていたので、こんなに広い草原があるのは意外だった。
再生センター横の崖
再生センターの横にある砂層の崖。写真左にあるのは再生センターに上る階段。左上の淡い水色の建物は施設の一部。
崖の手前は草原が広がっている。
枯れ草の上をフカフカ、パキパキ、と崖に近づくことができた。崖は黄褐色。
ゆるい斜面を登る。だんだん急になったが、崖に触ることができた。軟らかな砂だった。
枯れ草などの上に流れ落ちている砂。前の日の雨で流れ落ちたものだろう。
上流側に草原の中の道をたどる。昨日の雨で流出してきたと思われる砂が道を覆っていた。
前方に緑のつたが絡まってオブジェみたいな状態になっている樹木が見える。
そのうち泥と枯れ草の道になった。水たまりをよけて脇を通ったらずるっと滑ってしりもちを付き、泥水がズボンにはねた。思わず手をついたところには野バラのトゲ。水たまりが続くので、気をつけて歩くのがしんどい。
河原におり、河原を進んだ。
川岸の地層
河原に降りて、ほっと一息。下流の眺め。
川岸の地層。
上面は今まで歩いていた草原。写真では草の根が写っている。写真下部1/4ぐらいは河原の砂利。
河原と上の面との間には下から、表面がやや赤茶けた砂利の混じった層、よく締まった砂層、砂利層、黒土の層、となっている。
今まで歩いていた草原は河原ではなく、数種の地層が重なってできている、川岸の段丘面であることが分かる。
黒っぽく幅の広い崖
オブジェ風の木の辺りから再び段丘面に上がった。黒っぽい崖が見えたが藪のため近づけない。
さらに行くと、こんどは幅の広い黒っぽい崖。崖には地層の重なりを示す横線が入っている。
崖の上部、剥離した跡が見られる。黒っぽい崖だが、剥離跡は黄褐色。その下には剥離して落ちたと思われる砂質の塊が転がっている。
このような塊はこの崖の足元のところどころに見られた。これらの剥離跡や剥離塊は数週間前に来たときもあった。
崖の表面でも剥離が見られた。剥離しかけている小片を取って手で割ってみると、パリッとした感じで割れた。
幅広の崖の左側の眺め。
幅広の崖の右側の眺め。左側も右側もかなり先まで続いていそう。
崖の表面はヌルヌルでザラザラ。長い年月をかけて磨かれた崖なのだろう。
この長い崖の左端の上や、右端の上には小規模な黄土色の崖が見られた。
二層の崖
しばらく行くと、2色の層になった崖が見られた。上の層は黄褐色。下の層は黒っぽく、横に線が走っている。剥離した跡も見られる。
下の層は先ほどの黒っぽく幅の広い崖に続くものだろう。
上の黄褐色の層も、地形や樹木の陰で断続しながら、先ほどの幅の広い黒い崖の上に見られた黄土色の崖に続くのだろう。
少し進むと、黒っぽい崖と、その右上に黄土色の崖がまたあらわれた。そこでこの草原の段丘は終了。
草原の段丘と崖。今来た道を振り返ったところ。
大丸堰の奥では少なくとも二種類の崖が見られた。1つは黒っぽくて締まった崖。横に長く続いている。
もう一つは、そのすぐ上にあって黄褐色の崖。これは露出して見えている高さがまちまちで、地形や樹木のせいで断続している。
黄褐色の崖はまだあまり固まっていない砂層。黒っぽい崖は内部は黄褐色でやはり砂質。よく固まっているが、塊ごと剥離することがある。
(写真撮影、2006年8月、2007年1月、2月)