多摩川中流域

19.北浅川の地質 中生代と新生代の出会い
(八王子市上壱分方町付近)




 関東地方の山地の基盤を作っている地層と、多摩丘陵や関東平野の基盤を作っている地層が接しているところを見に行った。案内は地質の某先生(じつは私の兄弟)。生徒は若干2名。場所は京王八王子から西東京バスで25分、神戸下車。大楽寺町(だいらくじまち)と上壱分方町(かみいちぶかたまち)の北浅川の河原。「新版 東京都 地学のガイド」(コロナ社)が参考資料。
 多摩川が上流域から中流域に移り変わる場所でもある。


目的地の上流(切り通しの近く)

水草の浅川  水草

 ガイドブックでは「神戸」でバスを降りることになっているが、少し上流から見ていこうということで、その1つ先の「切り通し」で下車。北浅川は名前のとおり浅く、水草が岸側にも川の中央部にも生えている。何という草だろう? 清らかな流れで川遊びにはもってこいの感じ。川幅は狭い。人がすれ違うのがやっとというような木の橋がかかっていた。
 
堰堤

 川岸に沿って下っていくと堰堤が現れた。堰堤のところで、中州の向こう側にも流れがあることが分かる。この少し下流で2つの流れは合流する。
 この堰堤から下流400メートルぐらいまでがガイドブックに案内されている目的の場所。


関東山地の基盤を作っている地層(中生代の小仏層群)

小仏層

 堰堤の下流では川の様相が一変していた。岩がむきだし、流れは速い。対岸の岩が小仏層群(笹野層)の地層。
中生代白亜紀の地層だ。約7000万年前のものになる。7000万年前に堆積し、海の底のそのまた下で長い年をかけて圧縮され硬い岩になったものだ。岩は斜めに多数の層が重なって縞になっている。



小仏層群と上総層群の出会い

基底礫岩

 左の足元の地層が小仏層群、右の足元の地層が上総層群最下層部の飯能層。両者の関係は不整合。水平に積み重なっておらず、境界面もいびつ。
 小仏層群は7000万年前に堆積し、岩になっている。上総層群は新生代、300万年前頃から堆積したもの。両者の間にはとんでもない時間のギャップがある。小仏層群の岩の上には本来は非常に分厚い、もしかしたら数1000メートルの高さの地層があったかもしれないが、長い地質年代の間にそれらは破砕され浸食され、無くなってしまったということになる。その後で上総層群が堆積したのだ。
 小仏層群の岩は地殻変動などにより壊れかけている。壊れた破片(礫岩)が上総層群の下部に混入している。基底礫岩といい、不整合面のすぐ上の地層ではよくある状態らしい。

小仏層群と上総層群

 対岸。左側の堅そうな岩(大きいもの2個)は小仏層群。草の付いている辺りから右側の柔らかそうに見える岩(上下2層)は上総層群。


植物の化石

植物化石

 上総層群の泥層の中に入っている植物の化石。黒い木片だが、拾ってみると確かに硬い石になっていた。この下流ではメタセコイアの立木化石も見られる所がある。


中生代の岩

中生代の岩

 左の岩は砂質の固まったもの、右の岩は泥質の固まったものと思われる。


割れ目

 中生代の地層は地殻変動の影響でグシャグシャにされていることが多い。この岩にも割れ目が何本かはいっており、しかも割れたところで少しずれている。

割れ目

 この岩では割れたところが浸食を受け、間が欠けている。

風化

 この岩は上中下3層に分かれているように見えるが、上部と下部は、表面の角礫になった部分が風化を受けて変色したもの、中央部は角礫がはがれ落ちて内部の岩石の色が露出したところかもしれない。


再び小仏層群と上総層群

小仏層と上総層

 手前の黒い岩は小仏層群。中生代の岩。向こう岸の左側、黄土色の部分は上総層群の泥岩または砂岩。どちらなのかは叩いてみないと分からない。右側の白く見える岩は小仏層群の岩。

小仏層群と上総層群。

 同じ場所のアップ。向こう岸の上総層群の岩(左側)と小仏層群の岩(右側)。
小仏層群は数10メートルの単位で凹凸があり、その凹凸の上に上総層群が堆積して凹部を埋めている。

小仏層と上総層

 ここでは左1/3位が小仏層群の岩(白っぽい丸みを持った岩)。その右側(肌色の岩)は上総層群。

上総層

 上の写真の右側の続き。上総層群の岩。ほぼ水平に3層か4層重なっている。
中央の層の一部が茶色っぽい層になっているが、これは地層が異なるのではなく、割れ目の筋からしみこんだ水によって酸化されて変色したもの。


これも上総層? それとももう少し古い地層?

上総層?

 川岸の崖のポロポロとはがれやすい岩。小仏層群のような硬い岩ではない。


現代の堆積層

土砂の崖

 しばらく下流側に下ったところ。白亜紀の岩の世界は終わり、川岸は最近堆積した土砂の崖。この崖はかなり高い。上に小さく人が見える。
 このような堆積物が圧縮凝着されて上総層群飯能層の鎌で削れそうな柔らかい岩になり、さらに圧縮され変化して、小仏層群のような岩になる。


メタセコイアの立木化石

メタセコイア

 帰り道、中央自動車道の浅川橋の下流にあるメタセコイアの立木化石を探した。
川岸の草むらでやっと1つ見つかった。幹の肌はめくれかけている。

メタセコイア

 右脇の草を鎌で除いていったらかなり大きな株になった。
鎌は某先生が地質調査用に100円ショップで買った小ガマ。
古生代や中生代の硬い岩はハンマー、上総層ぐらいのところは鎌がおすすめ。

(2006年9月)








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