多摩川中流域
緑の縁取り
最近多摩川を通りかかって気になっていたことがある。
川岸の入り組んだところに、所々半円形を描いて小さな緑の縁取りがあるのだ。
半円形の中側は鮮やかな緑一色で、半円形の縁はやや草色。岸のややくすんだ緑の混じった雑多な草の色とはまったく違う。
どこにでもあるわけではないが、矢野口の橋の下の池のような水たまりあたりにも多いように見える。
浮き草が流れ着いて繁茂しているように見えるが、いつか確かめてみたいと思っていた。
梅雨の晴れ間の夕方、岸に下りて見に行った。
袋小路支流の大変貌
袋小路支流とは私がとりあえずかってに名付けたところ。
鶴川街道の多摩川原橋の下あたりで本流に合流する小さな流れで、稲城よりの河原にある。
多摩川中流域のおもしろさ、魅力を発見し、この「多摩川中流域」の、2.「不思議な光景」、3.「湧き水」で、紹介した場所だ。
今年(2006年)の3月あたりから、多摩川中流域のあちこちで大規模な河川改修工事が始まり、この付近も川岸や中州にブルドーザーが入り、むき出しの砂利地に平坦化されてしまった。
多摩川原橋を通るたびに複雑な思いをしてみていた。河原には下りる気持ちは失せていた。
写真は多摩川原橋の下から下流側を眺めたところ。
多摩川の袋小路になっていたかつての支流が本流に合流していたあたりは
今はブルドーザーの通る道が造られてふさがれている。
ブルドーザーの通る道の下に丸い土管があり、どうやらそこから袋小路の支流の水が流れ出ているようだ。
橋の上から見ると、このブルドーザーの通り道の裏側に池のような水たまりがあり、
そこに緑の縁取りが発達している。
そちらの方に砂利の上をいってみた。
緑の縁取り
ブルドーザーの通り道の裏側には土管の口が開口し、案の定そこから豊かな水量の水が流れ出ていた。
橋の上から池のように見えたのは、土管の口から流れ出た水がたまって、本流の方に流れ出ていく場所だった。
たぶん元々の支流の流れと同じだろう。
緑の縁取りはそこかしこに発達していた。
少し離れてみると、緑の小島が沢山あるような感じもする。
これはブルドーザー道から下流側を撮ったもの。
いよいよ緑の縁取り。間近で、手に取れる場所だ。
緑の縁取りは一見浮き草が繁茂したもののように見えた。
しかし、拾い上げてみると、互いに茎でつながっていて、しかも根っこが水面の下の砂利や小石などに付いていた。
1〜2株取り、家に持ち帰った。
あとで図鑑で調べたところ、ミズハコベ(アワゴケ科)らしいことがわかった。
名前も形もよく似たものにミゾハコベ(ミゾハコベ科)というものがあった。
インターネットで見ると、ミズハコベは希少種、もしかして絶滅危惧種。
一方のミゾハコベは水田の雑草だ。
水の上に浮かんだ葉の形や繁茂した様子はミズハコベとして紹介されているものとそっくりだ。
花の形や小さな果実の色はミズハコベとミゾハコベでは異なるので、そのうち確認してみようと思う。
湧き水の清流は無事だった
今度は橋の上流側を見てみた。橋の上からも、上流側にも緑の縁取りがあるように見えてはいた。
しかし間近で見ておきたい。川岸に生える普通の草とは違うことをここでも確認しておきたかった。
岸に下りて見てみると緑の縁取りがすばらしく発達していた。
そして、うれしいことに、きれいに澄んだ水がかなりな水量で流れていることがわかった。
どうやら湧き水の清流はブルドーザーでつぶされずに残ったようだ。
浮き草のような水草はこちらの岸でも、あちらの岸でもきれいな縁取りをつくって繁茂していた。
縁に近い部分はやや緑が薄い。
水源を目指して
澄んだ水が豊富に流れているので、湧き水などの水源がどうなったのかも気になり、上流の方を見に行った。
草の株を上から踏みつけ、泥にもぐらないように気を付けながら進んだ。
コンクリの護岸付近は水がなさそうで、以前見た湧き水は見えなかった。
湧き水は雨がよく降ったあとなどの時期によるのだろうか。
途中の水路。向こうに見えるのは下流側の多摩川原橋。
だんだん水の流れが草株の間を通るようになる。
向こうに白く広がるのはブルドーザーで平らにされ砂利がむき出しになった中州。
手前の草の茂ったところが土手のように残されている。
向こうは本流を隔てた調布側。
この辺が流れの最上流。草株の間に水がたまっている状態。流れているという感じではない。
水はあちこちからしみ出して、あのような豊かな水量になっているのだろう。
一番上の水たまり。近くの草を踏むとずぶずぶと沈むような気がする。
写真はちょっと手前のほんの少し高くなったところから撮った。
ここが水源最上流であろう。
(2006年6月撮影)